まっしろ
yatuka
突風を受けて 開いてしまった扉は もう閉じられなかった
蝶番が壊れてしまって 斜めに動くようになって
いつでも誰かが 乱暴に斜めに立てかけているが
風が吹くと枠にしこたまぶつかって 耳が驚く
扉の外には 似た様な異世界があって 町娘がいると聞く
正確には 誰の影なのだろうか 年若い少女の姿だ
開いてしまった扉 影の楽園 壊された蝶番 驚く
ある日 誰かが扉を一枚外して 外の世界を見ろと言った
そこにはもう 私の居場所は ないじゃありませんか
私は少し笑って答えた 少女がドアからこちらを覗いて笑った
吹き曝しの部屋の中で 美味しいお茶を入れて 眠る
あの子はもう 私達の部屋には 二度と戻れないのだろうか
扉は外され 他に遮るものなく そこかしこに虚無が湧くのに
一人でいる方がいいと 血を残らず搾り取って まっしろに