まっしろ
yatuka

突風を受けて 開いてしまった扉は もう閉じられなかった

蝶番が壊れてしまって 斜めに動くようになって

いつでも誰かが 乱暴に斜めに立てかけているが

風が吹くと枠にしこたまぶつかって 耳が驚く

扉の外には 似た様な異世界があって 町娘がいると聞く

正確には 誰の影なのだろうか 年若い少女の姿だ

開いてしまった扉 影の楽園 壊された蝶番 驚く

ある日 誰かが扉を一枚外して 外の世界を見ろと言った

そこにはもう 私の居場所は ないじゃありませんか

私は少し笑って答えた 少女がドアからこちらを覗いて笑った

吹き曝しの部屋の中で 美味しいお茶を入れて 眠る

あの子はもう 私達の部屋には 二度と戻れないのだろうか

扉は外され 他に遮るものなく そこかしこに虚無が湧くのに

一人でいる方がいいと 血を残らず搾り取って まっしろに


自由詩 まっしろ Copyright yatuka 2021-11-15 18:40:27
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