いちじく
るるりら

スーパーで売られている無花果はスーパーなイチジクではない
ミルクが切り口から出ていない
それでも ためつすがめつ見る
皮の色合い ふくらみ 同じものは ひとつもない
紅をさしたかのような口が美しい
心を決めてパックを一つ持ち帰る
皮を剥ぐと きれいにむけたりむけたりむけなかったり
剥いだ跡に現れる新鮮な肌色は生き生き
たまらず かぷりと頬張る
甘すぎることのない なつかしさ
たまらずあたりを散歩する
すると 無花果の樹木は、あった
樹の下は 乳香の水の匂いがする
嗚呼 あの日の匂いがする
ひざこぞうだ
 そうでした 
いちじくと言おうとして いちにくになってしまったあの日の
おひざにくちづけ
かさぶたをはがして ちょっと出た血に
いたずらこぞうくんが とつぜん やさしい目になり
頬がやさしく わたしのひざこぞうに触れた


自由詩 いちじく Copyright るるりら 2021-11-10 13:24:26
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