愛の手羽先
平瀬たかのり

 ははおやは居酒屋をしていた
 食卓にはいつも
 カラリと揚った
 塩こしょうの効いた手羽先だった
 から揚げは食べたことがなかった
 小学生のぼく

 肉を指で割き
 口に入れたら
 ずるり、としゃぶるように
 たっぷり味わってから
 手羽の、その先の先まで
 前歯で噛みちぎって
 小骨の骨ぎしの肉まで

 仕事を終えて風呂あがりの
 トップバリュ〈バーリアル〉は
 どうしたって
 二缶目のプルを開けざるを得なくて

 ははおやが飲みすぎだと諭す
 でもそれは
 あなたの焼いた手羽先が
 小学生のころと変わらず
 カラリと揚がっていて
 塩こしょうが効いて
 旨いからなのですよ

 あの、
 いろいろごめんね


自由詩 愛の手羽先 Copyright 平瀬たかのり 2021-10-29 22:10:09
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