メモ
はるな



幸福でいることを、なにかに当てはめようとしてしまう。渇いている理由を知るのとおなじに、幸福である理由を、幸福でいてもいい理由を。階段を降りていく夢を見て、涙の乾いてまぶたが開けられないで朝。ま昼に電飾を着るようなのを、幸福とおもってた。
わたしは砂で、舫の立てられない海辺で、船や波打ち受け入れる。
寄せ返しを数え、雨の日には、少し形作られる。でも、きれいな海辺じゃないと思って(いて、それがかなしかった)。

十年前よりは、すこし知っていることが増えたので、知らないことはもっと増えた。
上手いやり方を覚えるというよりかは、つらいやり方をいくつか捨てた。
いまは娘の髪が腰まで伸びて、やわらかく光を跳ね返している。

あたらしいものを作らなくても、きれいなものを増やさなくても生きていくと思う。
そう思うとき涙は少し出る。わたしはもう、それを辛いとか喜びとか汚いとか、なにかだと決めなくても良いのだ。



散文(批評随筆小説等) メモ Copyright はるな 2021-10-23 06:06:35
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
メモ