血を吸うな吸血鬼
凍湖(とおこ)

血を吸うな吸血鬼
おまえは蛭のように
皮膚にとりつき離れない

おまえは不幸なことに
好いた人間の血しか吸えぬと言う

血を吸うな吸血鬼
おまえが好いた人が死んでも悲しむな
それはおまえが招いたこと

血を吸うな吸血鬼
おまえが愛しいと言いながら掻き抱いた腕のなかで
哀れな人が苦悶の表情で枯れていく
おまえが抱擁と呼ぶそれは獲物を逃がさぬ拘束とどこが違う……?

血を吸うな吸血鬼
おまえは本来吸血鬼ではなかったのだから
ただ戻れ、ひとりの人に

決して満たされることのない飢え
それでも戻れるかはおまえ次第

あさましくも泣きながら血を啜っているうちはおまえは吸血鬼
おまえの下に無数の死体が転がっている
もう そんなことも忘れてしまったか……?


自由詩 血を吸うな吸血鬼 Copyright 凍湖(とおこ) 2021-10-21 16:26:53縦
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