嵐の前に
坂本瞳子

いまのうちに月の光を浴びておきたまえ
明日の夜は雷雨になるそうだから
身を潜める場所を見つけるのは後でもいいけれど
目星は付けておきたまえよ
行き当りばったりでは
のたれ死んでしまうかもしれない
そんなことをさせるには惜しい君だから
今宵の内にその身体には光を蓄えておきたまえよ
隠れ家では
羽根を繕い
爪を研ぎ
牙を磨くといいさ
眠る時間を削ってでも身ぎれいにしてくれたまえよ
荒削りでもいいから内なる美貌を剥き出しにして見せておくれよ
次会うときが楽しみでしょうがないのだよ
いまからもう


自由詩 嵐の前に Copyright 坂本瞳子 2021-10-18 22:59:34
notebook Home 戻る  過去 未来