秋の。
印あかり

香る。見える。
金木犀と遠く突き抜けるような空
何年経とうが鼻の奥に、目蓋の裏にあるのだから

泣くほどのことでもない。
「思い出す」と書くには頻繁すぎるほど
些細なことが引き金になって
その度にわたしのこめかみを撃ち抜くのだから

わたしは何度も死にました
何度も何度も死にました
だのに今、なぜ生きているのでしょう

お迎えが億劫だったからだと思います
ただそれだけだと思います
落ち葉。
いつか土に還るまで、
機嫌のいいときのわたしの表層をなぞり
空へ。
途絶えた飛行機雲が人生らしい





自由詩 秋の。 Copyright 印あかり 2021-10-08 22:56:53
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