Cといた会社
番田 

昔、新卒で入った会社のことを、時々思い出すことがある。研修のため、倉庫でcという男といつも品出しをしていたことを。千葉県の柏にあった倉庫で、良く晴れた日には、時々、林の中を遠くに歩いていったものだった。そして僕は、そこに通うための電車賃を、ちゃっかりと着服していたものだった。僕は今となってはなぜそんな悪いことをしていたのかはわからないけれど、言えないような額の差額を、毎月もらっていたのだ。税金がかからないことを考えると、その金額を越えるぐらいの給料を、今でもおそらくもらったことはなかったかもしれなかった。その給料を持って、オーディオ屋に行き、JBLの巨大なスピーカーと、前から僕の欲しかったサンスイのアンプなどを手に入れたのだった。その給料で買ったシステムで、今となっては、唯一残っているのはスピーカーだけだ。その、アンプもCDプレーヤーもMDプレーヤーもすべて処分してしまったのである。


cが会社を辞めたのだという電話をもらったのは、しかし、あまりにも早いできごとだった。クロネコヤマトで働きたかったのだという、僕にとっては奇妙な動機だった。そして、僕はすでに営業として勤務地に配属されていたので、がんばってくれとでも伝えた気がした。そして、電話をもらったのは、僕は夏の日の夜だったのだと記憶している。ブリトニー・スピアーズがプレーヤーからは流れていた。売り子が来ていた生命保険に加入したのだという話を、そこで、僕に彼はした。興味もなかったので、ラルフローレンの靴下をもらってはいたけれど、ケチなので、僕は断固として断っていた生命保険だった。それからまもなくして、研修中に会った先輩から、「おまえ、生きているか」と突然聞かれたのだった。そしてそのあとすぐに彼が亡くなったのだという話を僕は聞かされたのだった。



散文(批評随筆小説等) Cといた会社 Copyright 番田  2021-10-08 01:39:58
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