修羅の星
atsuchan69

暴力のない家庭で育った子どもたちは幸福だが、おそらく今も昔も世界中の子どもたちが厳しすぎる躾けや暴力の犠牲になってきたのだと思う。そういう心に傷を負った大人たちが、この世界に光を、あるいは闇をもたらそうとしている。

ただ幸福な幼少期を過ごした子どもたちも、ひとたび戦争が始まれば否応なく殺しあいの場所へと連れて行かれる。否、戦争がなくてもこの世界は修羅場だ。家では優しいお父さんも、あえて金を稼ぐためには非道も問わない。夢見る妻には説明のしようがないことだが。判ってくれるのは愛人だけだ。

これは言い訳だ。家族を守るために、植民地を作り、奴隷貿易を行い、武器を売るために戦争を行い、敵にも味方にも等しく武器弾薬をばらまき、街を壊し、多くの船を沈め、大勢の死傷者を作り、病院を建て、船を造り、街を復興し、反戦ソングの歌とベビーカーを売ってきたのだ。

ご覧よ、星が燃えている。あれは修羅の星だ。もうボクたちは二度と苦しむことはない。愛する妻よ、眼を閉じてお眠り。子どもたち、おやすみ。あともう少しで天国に行けるよ。何も心配しなくて良い。パパとママとおまえたち、みんなで天国へ行くんだ。この星が燃え尽きたとき、もうそこは天国なんだ。


自由詩 修羅の星 Copyright atsuchan69 2021-10-05 20:13:45
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