傷んだ果実の盛り合わせ
ただのみきや

犬も食わぬ だとしても ただ己の生前供養として
またも雑多な感傷を一つの籠に盛り合わせてみる
秋を想わざるを得ない日 繰り返される儀式として



ひとつの面差し

睦まじくもつれ飛ぶ白い蝶と黄色い蝶
もう一羽 黄色が割って入る

だがもうなにかが違っていた
日差しは濃い黄金 舞台の証明のよう

草木が風と戯れる辺り
瞑らせる だれかの口形へ

吸い込まれて行く
祈りに満たない気づきのもつれよ





少女化

取りこぼされた木の実のように
残照に馴染み
誓う少女の指先が折る千代紙のように
固く閉じてゆく
母という曖昧が曖昧のまま 
互いが互いの夢のように





生は刹那の

雨傘でもなく日傘でもなく
天気雨の傘がある

老いに追いつけず少年は
太陽と虹の間に立ったまま

耳の裏をすべる子蛇と戯れる
まだ見ぬ誰かの美しい目隠し





儀式

あなたの中で地団駄を踏む
幼子をあやそうと
小さな笹舟を流しました
ゆるやかな束縛が愛だとしたら
ああ水の帯に沸き返る光の鈴よ
容易く途切れ かつ不断の
一滴で致死量だった 涙の
わたしたちは同罪の確信犯
笹舟は青いまま沈みます





浅ましさ

朝 メジロが死んでいた
亡骸を両の掌に包みこころに埋めた
ヤマガラを埋めたこともある
スズメも ムクドリもだ

いつか芽を出して
     囀る翼たち

そんなことはなかった
草一本生えない凍れた土地
いつまでも行ったり来たり風だけが
なにも見つけられずに泣いている



               《2021年9月11日》










自由詩 傷んだ果実の盛り合わせ Copyright ただのみきや 2021-09-11 12:46:15縦
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