あこがれ
はるな



花の匂い まちの匂い 文の匂い
というものに
あこがれて 今でも
色色なものに なってみますが
わたしには今でも
秋の夕暮の忘れもの、
雨ざらしの古い花瓶、
それとも何も書かれていないままの紙
そんなふうな匂いだけが
薄べったくはりついている

正しいだけの生活はないだろうと思っても
こんなに間違えているばかりの心持ちの
いったいどこに生活があるのか
胸のなかに古い水を湛えたように
あふれるな あふれるな
と念じながら
一層全て流れてしまえと思っている
わたしが何かいつも誰か教えてくれますか?

憧れは
旧びながら輝いて、
もうそれがなんだったのかわからない
ただぼんやりと輝いて
明日は明日なりの匂いを持って
わたしは 今でも
色色なものに なってみる
溢れよう 溢れようとする胸のうち、
古い水が揺れながら
少し 確かに 
光るときがある



自由詩 あこがれ Copyright はるな 2021-09-10 17:08:46
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