どこかのここ
こしごえ

これは墓まで持って行く。
そういうひみつがひとつくらいあるのではなかろうか
わたしにはそれがある。
これは墓まで持って行く、と
目をつむり見つめる

ひみつを見つめたあとに
見あげた空はのっぺりと青く
雲ひとつないおもい出の あのひと

墓がひっそりと待っている
ひみつは
今を大切におもう
光るそよ風にふかれている
人知れずに

ただ ただ 生きるの 死ぬまで生きて生きるの
そう言ったあのひとはうつむいてほほえみ
空色した毛糸の手ぶくろをそっととってわたしと
握手を交わして。
別別に去った
あのひととわたしは
どこへ行くのか
ひみつの孤独な宇宙の
どこかのここと どこかのここで
青い星の沈黙する
涙を零している


自由詩 どこかのここ Copyright こしごえ 2021-09-06 13:46:35
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