朝の列車
……とある蛙


吊革につかまる
リュックを背負った妄想の列

モノクロフイルムの
買い出し列車
一応に皆、リュックを背負い
何があってもリュックを手放さない
網棚には何も無い
大したものが入っているわけも無く
後生大事に抱えている

座席には寝ているか、寝たふり
目を開けている者は
スマホを一様に見ている
そこには、
知らない誰かが得する情報はあるが、
自分が得する情報は無い、
しかし、
貪るように目を通す

遅れないように

もう、何十周も遅れているのに
賢い君は分かっている筈だ。
スマホが何も産まず、
貧しい君から、
幾ばくの無駄金と
考える種を奪っていることを

指示があるまで
何もしない
何も考えない
何も約束しない

何も無い自由だ
同じ顔して
同じ頭で
同じ格好をして
同じ物を食べている
友達がいれば?
友達は妄想の自分

それ以外は敵だ
気に入らなければ
匿名という鎧を着てクレームだ
どうせ友達は皆同じ顔だ
匿名という名の友達だ

リアルに人を莫迦にする
言葉は空中に消えてゆく
スマホの中の妄想のリアル
朝の列車の中は

妄想が
リュックを背負って揺れている


自由詩 朝の列車 Copyright ……とある蛙 2021-08-31 10:10:54縦
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