どこまでもつづくせかい
帆場蔵人

暇つぶしによる暇つぶし 隔てられてようやくきづいた

しらないふりで溶けている彫像
忘れてしまった顔が、多過ぎる
ひとの顔がなくなり始めている

だれが喰ったのだ? いや逆にお前が喰われたのではないか

路傍に吊り下げられた、あれがみえるか
鮟鱇によくにているが、河豚かもしれぬ
顔をなくした亡者たち、腹の皮を割いて

濁流が流れおちてゆく ひたひたひた ひとひとひとひと
誰か流れをのぞきこむ スクリーン越しの歪みが歪む
艶めく鉤針だけが、在る、鈍く重い鉤針だけが、在る

顔よ、顔が、顔に、カオカオさんが走りゆく、顔だ、顔か
あかあかと あかあかやかおよ、あかあかとかおよ、かおよ
顔よ、顔が、顔に、カオカオさんが走りゆく、顔だ、顔か

しらないふり
     溶けている彫像
忘れてしまった顔
        多過ぎる

  ひとの顔がなくなり始めている

顔を探した男が鉤針に突き刺さり吊りさがる
昼さがり、カオカオさんの貌に浮かぶ男の貌
隠された口元に浮かぶ、貌よ、貌よ、貌よ……


自由詩 どこまでもつづくせかい Copyright 帆場蔵人 2021-08-20 22:58:01縦
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