砂浜でことばを砕く
かんな

砂浜であたたかな光を浴びながら
私たちは貝殻に閉じ込めたことばを砕いている

細かい粒子がキラキラしては手のひらで
掴み切れないものをかろうじて掻き集めて拾っている

足の裏に微かな熱を感じるときは
こどくを振り払うように
一歩一歩重たい足を動かしてはもがく

荒波に深い渦に飲み込まれたい衝動は
いつも隣に歩いているから
いっそ手をつないでしまえばいい

なんでどうしてと
小石を繰り返し投げつける水面に
映るのはただ私で ただ私たちだ

いつだって死にたい いつだって死にきれない
いつだって生きてはいかれないから
いつだって生きたいと私は願う 私たちは祈る

それはまったく届かないみたいに
星の数だけ儚く光り 砂の粒の数だけ脆く崩れる
苦しみは表し切れない この祈りは願いは届かない
わかってもなお
そこには伝えるためのことばがある

だから私たちは今も
砂浜でことばを砕くんだろう


自由詩 砂浜でことばを砕く Copyright かんな 2021-08-17 09:26:50縦
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