左目 この世の果て
木立 悟







夜明けに立つけだものが
空を掴んでは離している
虹の足音
虹の足音


月は森に居て
径は光に流され
まぶたは眠り
さらに 昇る


何もない昼の空
風の音
水に近づく



鐘が
鐘を鳴らしている
氷は
虹と緑にまたたく


触れた水の
反対側に目をひたし
見つめるのは街
雨の雨の雨の街


海と川のはざまに立つ
白く歪んだ双つの建物
水紋の群れを渡る鳥
増えつづけ 去りつづける


左目 
中指
さらに昇る
さらに昇る 痛みと虹


四つめの腕
六つめの指
両膝と胃を結ぶ三角から
拡がりつづけるひとつの珠


左目 痛み
永い軌跡
傾き 偏る
縦の銀河


深緑の蝶が
森に降る
葉に溶ける
土に溶ける


鏡は人形
壊され 埋められ
言葉を隠され
金の流れに投げ捨てられる


指と指のはざまを濡らし
雨音だけが遠のいてゆく
虹が分かつもの
近づけるもの


左目 この世の果て
金に 緑に
さらに昇る
さらに巡る



















自由詩 左目 この世の果て Copyright 木立 悟 2021-08-14 10:27:01
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