カシスマーマレード
マッドビースト


 自己憐憫やセンチメンタルなんて塗りつぶされてしまえ

 あかね色と紫の混ざった夕暮れは街を照らすよ
 消え去りそうになりながらも今日を終えた人たちを称えて

 透明な感性が空中に漂ってもっと高いところに行こうとしている
 目が合ってしまってこちらを見てにやりとする
 さぁ私を手に入れるのはだれかな?
 みたいな高慢ちきで高飛車な笑顔だ
 はやく消えてしまえ

 公園の雑木林で地面に突っ伏してるサラリーマンを見つけた
 正しくはサラリーマンの抜け殻を だ
 背中のファスナーが頭から足の先までがばりと開いてる
 きっとさっきのが中身だったのだろう
 自分の背中がもぞりとするようで居心地がわるい

 駅は坂の上にある
 なぜだ
 朝を重力に逆らうという不自然な試練で始め
 夕方には自分の力で歩かず開放感に満たされて家路につくためか
 違う 土地が他になかったからだ
 なんにでも意味を求めずぎるな
 俺たちはジャムのなりそこね
 ゼラチン質の残りかすだ
 朝日がさせば蒸発するのだ
 一日はもっとべっとりとしていてもいい

 あかね色と紫の混ざり合う夕暮れの街は本当にきれいだ
 この時間だけ時間は濃厚になりだれも美しくなる
 透明な感性なんて生活観のないものの入り込む余地などない
 一日はもっとべっとりとしていてもいい


未詩・独白 カシスマーマレード Copyright マッドビースト 2005-04-25 23:58:20
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