放浪者と廻者
帆場蔵人



この夜にはふたつの月がある 手、埋葬、される
太陽が失われたときの名残り 耳に、注がれる、火



電車が駅に入ります ※漂泊しすぎにご注意ください

 ほら、無数の骨組み、クジラ、ヒト、アドバルーン……
 ひやしあめ、ひやしちゅうか、かなしそうなetc.etc.
 鉄コンキンクリィィと、と と と、熱さ で とけ た

うなぎもほろび、花鳥風月もほろび、ヴクの歌に生きるだけ
故郷は遠きにありておもうもの、また、かなしくうたうもの

  汀、  渚とはなにか
 汀、汀、  蟹は砂のなかから
  汀、    化石さへみつからない

  去りし海を呼べ砂に傾いた灯台の群れよ
 
廻者(ヴク)は砂と空へ歌を捧げる、海をしらぬひとびと
無数の砂丘は墓であった、諦めのうえに降る砂漠の海
骨組まれていたものが、額縁からはみだしてはぐれ

回転する鳥たちを詠みあげヴクは琴の
弦に変えていく捻られひきしまる歌声
継がれる火と遠くに在った火の名残り

鎮まれと、痛みも悲しみも怒りも、やがて風化する

立てかけられた 
 梯子どこにもとどかず
  人魚はのぼる足もない

 汀、汀、汀、去りし海を呼べ砂に傾いた灯台の群れよ

翆、と呼ばれるその楽器は、翠ともいうらしいのだ
奏者の性別によって変わるのだという、かわせみ、が
どんなものであったのかは太陽とともに失われた



電車は来なかった、また誰かが身を投げたのだ
俺はヴクにさそわれるままにしらけた六脚馬にのり
傾いた灯台の狭間をぬけていく、砂がまた渇いた
ヴクの歌はわからない、俺はそれを知りたい

流砂はそこにたどりつくのか、わからない、砂をかきわける
六脚馬のあゆみ、鳥はなぜ回転をはじめたのか、海はどこへ

うしなわれた、故郷への道は砂に埋もれて、行き方知れず

  (なぁ、 おしえてくれ、  いや、   いいんだ)

どこへ……

  どこへ どこへ…

 どこへ……

線路はそこにある、朝はない、ないとあるの蛇たち

風砂に還ろうとする身体を編み直してくれる、ヴク

とりつくしまをさがしていた、すべてはそこにある


自由詩 放浪者と廻者 Copyright 帆場蔵人 2021-08-06 12:55:28縦
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