きりとられた残像
山人

遠くに見えるのは
幼子の手をひいた二人の影
エノコログサを君の鼻にくすぐれば
ころころと笑い
秋の残照に解きはなされた

浜茶屋のまずいラーメンをすすり
それぞれの砂粒が肌に残り
それをそっと落とす
三つの幼い笑顔と私たち

未来さえ見えない、ゆく先々で
笑顔すら凍らせながら
私たちは泥の中を泳ぎ続けた

夏のかなしさはいつも訪れる
鳴き疲れたセミは私で
虚空を食べるホオジロは君
もどることができない
あのころの夏

きりとられた残像が痛む



自由詩 きりとられた残像 Copyright 山人 2021-07-24 05:33:50
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