温泉プール
服部 剛
旅先の温泉の
露天風呂から上がり
室内の入口で
横を向くと
だだっ広い温泉プールがあった
どぼん、と入り
ぴょんと跳ねれば、ふわり
もうひとつ跳ねれば、またふわり
さらに跳ねれば楽しくなって
ペンギンのような気分になってきた
ぴょんと跳ねるたびに
最近太り気味のぜい肉が
上から下まで、どこもかしこも
お湯とともに
たぷん、と動く
プールのながーい反対側に辿り着き
こおろぎ君に似た者が
水面
(
みなも
)
でじたばたしてるから
えいやっ と手のひらですくえば
不思議なことに、姿を消した
ながーいプールを
跳ね続け、一周した後
プールの外の椅子に
腰かけて
くつろいでいるところに
紺の
作務衣
(
さむえ
)
を身にまとう
おばちゃんが姿を現し
はっ! と思わずタオルで前を隠す
「あのぉ…ここ、水着着用なんですよ」
そう告げて、赤面する僕をみて
はーっ はっ はっ
と笑いつつ、去っていった
(まずい…そうだったのか
一刻も早くここを出なければ)
そう思うと今度は灰色の作業着の兄ちゃんが
現れて、お湯の温度を計り始めた
よし――あの兄ちゃんが背を向けてる間に
今だ!
たっ たっ たっ たっ たっ
自由詩
温泉プール
Copyright
服部 剛
2021-07-22 20:55:06
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