氷流
そらの珊瑚

夏の夕暮れの
そこは片隅
母の白い指のすきまから
転がり落ちた
ひとかけらの氷のゆくえを追った

蝉の声が遠のく
逃げていく蟻の触覚
氷は崩れ、いつか傾く
音もなく
あとかたの水

ゆっくりと自らを手放していく
ああ、これは死ぬということ

また
繰りごとのように夏が来る

板張りに横たわると
みぞおちを
ひとすじの冷たい真水が流れていく

いのちの片隅を
見つめる少女と対峙している



自由詩 氷流 Copyright そらの珊瑚 2021-06-25 08:24:45
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