たまに俺はあの人の事を思う
TAT
たまに俺はあの人の事を思う
あの人は俺より随分上で
昔ここに書いていた詩人だ
俺はあの人から随分多くの物を貰ったが
(一緒に行った沖縄旅行とか左手首に猫の顔がプリントされた茶色のトレーナーとかどろろのアロハシャツとか)
俺からは何もあの人にあげられなかった
てか受けとらねーんだよな
金目の物は
ガキ扱いして
乞食扱いしやがるから
例えば
五行上の
「あげられなかった」とかは
正にあの人が俺に与えた産物だ
大昔の俺ならきっと
「あげれなかった」って書いていただろうから
「違うタット。あげれないじゃないでしょ。あげられ。ら。らが抜けてる。らが要るから。なんでアナタあんなに素敵な詩が書けるのに日本語はまともに喋れないの?バカなの?」
ウイスキーにアマレットを混ぜた
ゴッドファーザーでなく
それよりも美味しい
ブランデーにアマレットを混ぜた
フレンチコネクション
ともに映画のタイトル
ジーン・ハックマン
1971年
どろろのアロハを検分しながら今呑んでる
なるほどなるほど
吹き出しの位置とか
ひとだま
井戸から延びる手
妖怪
襟
袖
背中
色々と
楽しみながら
計算しながら
作ってあるな
このシャツは
すまんすまん
そんな当たり前の事
このシャツをもらって
十年以上も経ってさっき気付いたよ
今はもう2021だぜ?
あんたがあんなに嫌がってた
国民の大運動会が
なんと今年は東京で行われる
ま
本当にやるか知らねえけど
空に不意に
気まぐれな猫の引っ掻き傷みたいに
流れ星がザシャッと
五~六発流れる時
決まって俺はあんたの事を思い出す
裏を返せばあんたの事なんか
百年に五~六回しか思い出さないハハハ
ざまねえな
違うタット
五~六発と五~六回だと
回数同じになっちゃうから
少しずらす或いは
大いにずらした方がいいよこの場合は
うるせえよ