ある晴れた日に
宣井龍人

その夜私は心地良さに誘われ近くの公園をぶらついた
二十歳になったばかりだった

奥まった先のベンチには品の良い老人がひとり
横に立つ街灯の光に暗闇からほんのり浮かんでいる

よく見ると少し古めかしい衣服を着ている
私は引かれるように見ず知らずの老人の横に座った

老人は「ある晴れた日に」と自分を語り始めた
不思議なことに老人の話が脳内に映画のように広がる

生誕に始まり幼少時から成長していき青年、壮年と
老人の喜び、怒り、哀しみ、楽しみなどが私自身に感じる
そして老人が墓石の下で静かに眠る姿が

それは鮮明に脳内を覆うと霧のように徐々に薄れていく
もう一度老人は「ある晴れた日に」と呟いた

ビクッとして横を向くと老人はいない
街灯が暗闇に浮かべているのは戸惑う私の姿だけ
公園の大時計はベンチに腰かけた時のままだ

風に靡くのは
時間を旅しているかのような
何処かで見たような老人の
一枚の写真


自由詩 ある晴れた日に Copyright 宣井龍人 2021-06-11 00:08:35縦
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