ヘイ・ヘイ・マイ・マイ
ホロウ・シカエルボク


おまえの首筋は、薄氷のような
心もとない血管を浮き上がらせて
口もとはうわ言のように
ニール・ヤングの古いメロディを口ずさんでいた

空はどぶねずみの
毛並みと同じ色をして
悲しみにくれたおんなのように
いまにも
ぼろぼろとこぼしてしまいそうに見えた

どうしようもない焦燥のルーズ
使いみちのない板に戯れに打ち込んだ錆びた釘は
飾り終えた生首みたいにうなだれていた

色の無い注射の午後

路上駐車をめぐって
男女が諍いをしている
ラジオは折悪しくニルヴァーナを流していて
まるでカート・コバーンのせいみたいになってる

大きな流れはどこかで砕かれて
四方八方で断続的に吹く
弱い風のようなものになった
おれはオペラグラスを手にして
そのくせ覗いてみようとはしなかった

マットなグリーンのメルセデス・ベンツ
運転手がハンドルに突っ伏している
あとで分かったことだが
持病が災いしてそのまま死んだそうだ

甘いコーンフレーク、そのあとの
機銃掃射のように浮き上がる蕁麻疹

あちこち弛んだみすぼらしい連中が
おれの肩甲骨のあたりになにごとか囁いている
あるいは、遠くで
遠慮すんな、ここまで来い、おれの目の前に

そんな度胸があるとも思えないけどな

悲鳴が上がる
路上で揉めてたどちらかが刃物を使ったらしい
男のほうか、女のほうか?
血を流しているほうが被害者とは限らない

おまえは
かさぶたのように崩れ落ちる
おれは


気付かないふりをしてパールジャムを聴いてる



自由詩 ヘイ・ヘイ・マイ・マイ Copyright ホロウ・シカエルボク 2021-06-08 22:50:44
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