こどくな蝶
秋葉竹



それから
足りないものを
探して
どんな決まりも守らなかった
そして
小さな指輪が取れなくなった

どこから帰っても
この部屋の窓からはなにもみえない
割れた備前焼の茶碗が
ゴミ箱に捨てられている

こんな小さな部屋では
小さなテレビで自由を守れる気がする

そして私は
だれにありがとうを言えばよいのだろうか

けんめいに棒高跳びをした
あの
学生時代の放課後
いまこの部屋からみえる
あのころの夕陽はあまりに美しくて

そういえばあのグランドには
こどくな蝶が飛んでいた

この部屋にはなにも飛ばない

こどくだけが
こじんまりとして
笑って生きようとしている


わからないのか


返してほしいわけではない


それから
足りないものを
探して
どんな決まりも守らなかった
そして
小さな指輪が取れなくなった









自由詩 こどくな蝶 Copyright 秋葉竹 2021-06-04 21:47:31
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