ギボウシの詩
妻咲邦香

そっと
ずっと
きっと
やっと
うそじゃないよね?
ぜんぶ
嘘じゃないよね?
鳴き声は文字に出来なくても
私を迎えに来るから
長かった後悔がいつの間にか去って
傷付けたかもしれない誰かと連れ立って
ふわっと
さらっと
ぶらっと
からっと
しんじられないほど
夜明けがとおくにあって
信じられないほど
緑はなまめかしいから
今日は何も手にしない
今日は何も手に入れない

汽車の来ない駅で
ホームが汽笛を待っている
大きな葉っぱになって私は
裾を揺らし夢を見る
誰かが飛び越えていく頭上
だって種明かしのない手品
大事に抱えて歩いてた
錆びついたレールの上
とぼとぼと
いけない事とわかってて
鍵を開けた
もうすぐ街が目を覚ます
そしたら私
何も知らないって言う
何も聞かされてないって
そう言うよ
きっと
もっと
はらりと
さらりと
すべりおちた露の甘さに見覚えがあって
いつか枯れてしまったら
もう会えないと思うから
だからいつでもそばに置いて
そっと
ずっと


自由詩 ギボウシの詩 Copyright 妻咲邦香 2021-06-02 23:18:51
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