春だった ツイッター詩
田中修子

「よぞら」

星のひかりとぬくもりを
お湯に照らした星たんぽを
かぜをひいているあなたの
足元に
しのびこませて

消えていく

のを、桜の花びらを
鼻にひっつけてしまった
黒猫に見られてしまった

黒猫の
背いっぱいに広がる
銀河



めぐるおと


「桜」
散った花は自由になって
ベランダまでやってくる


「紅梅爪」

そろそろ、あんまり
寒すぎる
ぬくもりの明るい春よ
宿っておくれ
内側の、暗いそこが
あるから
ソロリといらして
体を差し上げます
指先から
紅い梅の花を咲せば
まちゆくひとに
花びらを散らし
微笑んで
冬の終わりを告げよう
そしたら春が、くるのです
春神の
爪痕を
街じゅうに


「イシモチの目玉」

桜の蕾が、
はちきれんほど膨らんだ夢を見た。

塩焼きの銀の魚の目玉を
舌先でつぶして食う。

やわい。汁がでる。
芯が、ある。

こないだまで息をしていて、
浅海を見ていた目ん玉だ。


自由詩 春だった ツイッター詩 Copyright 田中修子 2021-06-02 05:36:36
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