残骸とひこばえ
atsuchan69

詩人たちが眠る森で
私は目覚めた
魔女たちが夜空をとびかい、
光る無数の妖精たちは、
夜つゆを飲んで歓びはしゃぐ
草木の葉を揺らし、
紅いキノコのまわりを
皆で踊り囲んで! 
よいか、預言者は全員殺された
未来を話すのは冒涜だからだ
それでも魔女のひとりが舞い降りてきて、
お前はきっと最後の預言者になるのだと言う
ああ、この私は悪夢など
絶対に、信じない
――この森が消えてしまうなんて
絶対に、絶対に‥‥
それでも私の瞳に映るのは、
骨と毛皮だけになった肉食獣の残骸と
老木の根から生じた蒼いひこばえ
やがて、世界は終わる
魔女から手渡された
白くかがやく天使の羽根を持ち、
小羊の革に
生贄の血で、
ふるえることばを綴る
――私は預言する、
この世界は終わりだ
夥しい数の死体の浮かぶ海と
傾いた高層タワーの群れ、
空をゆく巨大なドローン
黒焦げの街を機械の犬が走る
人々の祈りは枯れ、
清らかな声も水も尽きた
腐乱した顔には眼球もなく、
不快な匂いと
爛れた顔だけが陽に晒されている
私は預言する、この世界はもう終わりだ












そしてふたたび世界がはじまる

厳しい冬が終わり、春が来るように











自由詩 残骸とひこばえ Copyright atsuchan69 2021-05-25 12:52:19
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