ゆっくりと解凍する日々のうた
梅昆布茶

僕のぽけっとの紙片には
最新のもっとも無駄な解答が記されている

人生に必要なものの殆どが木箱にしまわれて
博物館の収蔵庫の奥深くにおさめられているとしたら

菫や蓬の花のように路傍にさりげなく
ささやかな展示場を設けてくれないとしたら

僕の胃袋はからっぽで遺伝子は誤配列のままで
僕の頭は冷たいカフェオレの缶のようなものなのだろう

僕の舌のさきは凍結した氷柱のなかのことばを溶かそうと
電気ポットで淹れた一杯のコーヒーを飲みながら

永遠に満額回答を待つ宇宙船の乗務員のように
収支が細かに印字されたレシートをまた一枚綴るように

あるいはコックピットにベルトで固定された山羊に似て
日々のチューニングを模索しては病室の窓から望む世界を
分散和音で淡彩化してしまおうとたくらんでいるばかりなのだ










自由詩 ゆっくりと解凍する日々のうた Copyright 梅昆布茶 2021-05-25 11:00:15
notebook Home 戻る  過去 未来