どこまでも春の日
帆場蔵人

水面をうねり進むのは
中州と呼ばれているものだ
息継ぎもなく川を這う

その背で
菜花の黄が
もえている

微かにひかる

ガラス片
あれは
人の手から
逃れて
中州の鱗に
転じて跳ねて

軽や
 かに
  流れ 
   それは
    とても

  春、

   い         ざ
蠢 て る 花 ざざ 、ざ ざ、ざ
 い   菜    ざ

息継ぎもなく川を這う、ガラスの鱗、菜の色
風と水を呑み干し、中州はときにひとも呑む
背の上で手を振っている、あれは、誰だろう

流れ流れて丸くなった
石、悠久に顔は削れた
のか、それともそれとも……

中州が身をくねらせる

あゝ、春ですね、石切りをする子どもたち
中州まで届くだろうか、いつかの春のように



自由詩 どこまでも春の日 Copyright 帆場蔵人 2021-05-15 14:28:20縦
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