雨に沈む
橘あまね

ざあざあと傘が泣いてる
交差点に人はまばら
忘れ物をしたようで振り向いたら
世界はどこにも無かった

息苦しさがどこから来るか
白く塗りつぶされる前に
見つけられたらいいのに
ぼくは錠剤に逃げ込んでしまう

つぶれたデパートやら
置き忘れられた領域に
雨水はどんどん溜まっていく
あふれたぶんは誰も覚えてない

真っ白に変わってしまって
空へ膨らんでいく痛みを
新しい世界と呼びたくないけど
ぼくは塗りつぶされた画用紙みたい
もう余地がないのだ

交差点に人はまばら
傘も泣きやまない
この雨音は永遠に続いて
ぼくは
置き忘れられて
白く塗りつぶされて
新しい世界という
使い慣れた言葉に
きっと
埋められてしまうんだろう


自由詩 雨に沈む Copyright 橘あまね 2021-05-13 20:43:16
notebook Home 戻る