春の青大将
ひだかたけし

ついこの前まで
白い花を咲かせていた木が
早くも新緑へと移り変わり
午後の日差しに照らされて
青々と輝き揺れている

その木の根元を
春の青大将の群れが
唸りを上げて進んでいく

私ははたと
死んだ母のことを思い出す
壊れたまま死んでいった母のことを

遠くから
規則的に杭打つ木槌の音が響き
胸いっぱいの懐かしさが込み上げて
すっと意識が奥まっていく







自由詩 春の青大将 Copyright ひだかたけし 2021-05-10 19:43:35
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