テクストフレイバー ☆☆☆ 敵-場 貝道具 1200/300
竜門勇気

丘を上がると墓石が並ぶ場所に出る。
下草は短く切りそろえられているが、白い花がところどころ咲いている。
それらは明らかに伐採者の意思により刈り残されたものだとあなたは解った。
墓石の間を歩いていると明らかな違和感を覚える。
あなたはある墓石の一つの前に立ちそれについて考える。考える間もなくすぐに違和感の正体に気づいた。
あたりを見回す。不吉な気配、不愉快な雰囲気、不気味な意図。

あなたはすべての墓石に、死者の名前が刻まれていないことを知った。
死者の名前の代わりに16進数が刻まれている。
目の前の墓石の0x16をよく見た。
それ以上の情報は得られなかった。

この場所は低い山に囲まれている。杉山ではなく広葉樹が主になった古い原生林に見えるが、この形になったのが近世なのか元来の姿なのかはわからない。
あなたは足音が四方から聞こえることに気づいた。足音は近づきも遠ざかりもしない。
確信はできないがどちらかの足を引きずっているように聞こえた。

あなたは我を忘れて突然、思索にふけっている自分を発見した。
その瞬間この場所に長居しすぎたことを実感した。
0x16の墓石に月明かりが差している。あたりを見回すと、再び違和感があなたを刺した。

シロバナタンポポ、アレチギク、イヌトグサ、ホシダライ。
先刻まで咲いていた花々がない。
刈り払われた下草とは全く違う、乱暴に引きちぎられたような茎がまばらに見えた。
中にはガクが残ったままのものもあった。
月が明かりを増したように感じる。墓石の文字が意味を増したように感じる。

16進法。白い花だけを残す。白い花だけを摘む。墓石。八卦。四山墓陵。星盥一亀。

考えはまとまるが理解が追いつかない。
あなたは途方に暮れているが、それだけのことだ。
足音はいつの間にか無数のざわめきとなって聞こえる。
その中のひとりだけが・・・どちらかの足を引きずっているようだ。
その足音だけを識別することができる。
それ以外はやはりもう、あなたにはざわめきにしか聞こえない
あなたは死んでしまった。
やり直すことはできず、終わることもできない。


このカードが場に出た時、塔塚に現れた場合は山札から1枚引く。あらゆるフェーズであれターンは終わらない。
攻撃表示で提示した時、確実に破壊され手札に戻る。次回のあらゆるフェーズで不存在として扱われるが、「食べる」マテリアルとして触っても良い。
展開の場合は「それをしない」で指定された時に山札から1枚引く。あらゆるフェーズであれターンは終わらない。
防御表示の時このカードを使用したプレイヤーは終了する。この終了は「それをしない」の前に行われる。「それをする」が宣言されたとしても遡及する。


散文(批評随筆小説等) テクストフレイバー ☆☆☆ 敵-場 貝道具 1200/300 Copyright 竜門勇気 2021-04-22 13:34:25
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クォート