メモ(つかうのこと)
はるな


言葉も体と同じなので、つかわないとこわばる。動かしかたがわからなくなる。
さいしょはねじを巻くように、ぎしぎしと動かす。だんだん関節が動くようになって、のびやかになる。ストレッチ。何でも試してみる。ちょっとださい動きも、懐かしい形も、恥ずかしくなるようなこともやってみる。最初より遠くまで手が届くようになる。長く走れるようになる。動きを組み合わせたり、飛び跳ねたりもしてみる。そうして、息をきらせて、すわりこむ。体のかたちをはっきり感じることができるようになったら最高、でもそれは一瞬で、かたちは変わっていく、ゆっくりと(ときどきは、急激に)。
言葉も体と同じなので、食べないと、飢えてしまう。しばらく食べられずにいたそのあとで、大きな物語にはとても手が出ない。でも美しいものは、しばらく遠くでみている。そのあいだに、まちなかの看板や、背表紙の題名やなんかから、少しずつ文字を読んでいく。読んで、考える。いまは図書館で借りてきた花の図鑑を読んでいるところ。花言葉は、花名の由来が載っていて楽しい。ポストに入っていたちらしもみる。ホームセンターやピザや水道修理のちらしなんかを。ざらざらしたちらし、つるつるしたちらし、ペラペラしたちらしを分けてみたりもする。そしてみ終わったら捨てる。
心のなかでは、強くやさしくありたいと、また、そういうふうに体を使うことができるはずだと思っている。もうすこし高く跳べることができれば、ということとそれは繋がってて、だから、光が揺れたり跳ねたりするたびに泣いてしまうこととも、絶対に繋がっているのだ。


散文(批評随筆小説等) メモ(つかうのこと) Copyright はるな 2021-04-22 13:29:04
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