帰り道
妻咲邦香

銀行からの帰り道
少し夏の日のこと思い出して
一緒に帰ったよね
前後縦に並んで

預金残高が足りなくて
感情論で帳尻を合わせた
ショーウィンドウのテディベア
2人にしかわからない約束して

ハンバーガーショップで細かいお金がなくって
財布の中にも街が出来てて
幸せそうに暮らしてた小人たち
今は僅かな利息が頼り
口座を作るのは簡単で
でも夕方には窓口は閉まるから
従業員等は月なんて見たこともないんだろう?

銀行からの帰り道
口笛に灯した火がいつまでも消えなくて
苦い雨を待っていた
君は大人にはならないと言った
僕は目を細めて
整理券の番号をもう一度確かめる

奥の部屋の大きな金庫には
捕まえた銀行強盗がぎっしり詰め込まれてるから
今後入り切らない分は
何れかのATMで払い戻しされるのだろう
悪態をつきながらも奴等は
まだ償いを済ませていないから
きっと夜も飛行機が飛ぶ事なんて知らないんだろう?

銀行からの帰り道
歩く度に小さくなってく君が
もうすぐ小銭入れに仕舞えそうだよ
ああもう二十四時間経ったから
地球は一回転したんだね
相変わらず酷いことをするね
全く


自由詩 帰り道 Copyright 妻咲邦香 2021-03-27 00:16:14
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