銀のロケット
道草次郎

遠い遠い場所
過去とも未来ともつかない時
銀のロケットは宇宙を渡った
ゆく先々には
驚くべき光景の数々があった
じつに多彩な星の世界が
めくるめくように展開していった
銀のロケットは
飽くこと無く虚空を突き進み
やがて
巨大な壁にぶち当たった
銀のロケットはこんな事もあろうかと
超高性能のドリルを搭載していた
難なく壁は破られた
壁の向こう側へ漕ぎ出したその瞬間
銀のロケットは
銀の輝くペンダントへと姿を変え
あっけなく床に落ちてしまった
ベッドには一人の少女が寝ていた
ベッドからはね起きた少女は
銀のペンダントをすみやかに拾い上げ
嬉しそうにそれを自分の首に飾った
細い指がチャームを開く
そこには
少女が見たこともないような
美しい星々が渦巻いていた
少女はニッコリと笑い
ベッドに入るなりそのまま眠ってしまった
遠い遠い場所
過去とも未来ともつかない時の
取るに足らない
ささやかな出来事である



自由詩 銀のロケット Copyright 道草次郎 2021-03-23 18:43:38
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