思いやり
ふるる

どちらか好きな方

をせよ。と声がした
冬晴れがそこかしこを粉々にしてゆくようだった
寒くて…
とてつもなくクリーン。

澄んでいるので電車の音がよく聞こえた
一キロは離れていて坂もあって
この街はかつて一面の田畑であった
ゆえに地盤が沈下しやすいとの話
容赦なくからみつく木枯し
独りの背中にしばし留まり

その比喩の使い方はそわそわする、と言われた
言葉というものに厳しい人だった
それと対峙するときクリーンかどうか
努めて真剣であれ、と言うのだった
あまりにも礼を欠きすぎているから
ふと洩らすなどもっての他
好きな方を
無理に選ぶ必要はない
言葉どおりの意味ではない
使えば使うほど不明瞭になるのが当たり前
しかし沈黙など
許されない
常に
発していなければいないも同然というわけ

我々は粉々になった冬の空をかき集めて袋に入れて口をしばり
ぐるぐる振り回しながら遊びに行った
招かれて嬉しくて浮かれていて
なのに怒られた
怒る人は大抵決まっていて
あなたは
怒るよりもほんとは
泣きたいのかなと
少し思った

ともかく、ここにこうして集まってしまったのだから、やるしかない
我々は選ばれなかった者同士で
ほんの少しはにかみや照れ笑いが許される
同じ頃
とても大事な会議や決定がなされていて
誰も何も知らないまま何もかもが進んでゆく
ここは一体どこなんだろう
どこに連れていかれているんだろう
そわそわする
わからないから面白いし
大抵の不安はそういうところから来る
行き先が分からないものに
いつの間にか乗ってるだなんて
夢でもそうそうない話。

面倒なことを押し付けられて
逃げ回ってるうちにこんなクリーンで寒い所に来た
期待してたほど酷くはなかった
前はもっとだったわ
もっと楽しいかわりに酷さも相当だったの
愛想笑いって本当に削られるよ
プライドとか時間が
変な話、と言うのか癖の人がいて
普通の話でも変な話になってしまうのだった
本当に変な話が聞きたいけど
無理そうだ
聞き流す技術の鍛練に磨きをかける
ピカピカするキラリと一瞬光る
空の破片たち

そんなにすぐばれるような嘘をついて一体何になるんだろう
嘘を息するようにつくのは本人は嘘の国で幸せに暮らしてるんだろう
嘘の国には休まる場所がない
煙草を吸ったことがないのに
吸殻入れを持ち歩くなんてナンセンス
ドングリを入れるためだと言う
ドングリはきれいだけど

さぞかしおめでたい風景だろうね
大勢が集まってお祝いをするだなんて
嫌味のつもりはないんだが
意図がないからいいというわけではない
騙される方は悪いのかな
善良というよりは愚鈍で蒙昧おまけに独善的で楽天的
それだけ揃っていれば充分なのに
さらに短絡的
ほらまた奪われる

なおそれ以上、
恥の上塗りはやめたいが
やめ方がどこにも書いていなくて
溢れんばかり
我々がこうしていても誰にも迷惑でないし困りはしないから
もうしばらくいてもよさそうだ
もちろん、
疑問符はそのままで
大勢が集まれば
言葉が溢れたりつまったり
堰を切ったりよどんだり
飲み込むものだし水掛け論などと
びしょ濡れな事になるけれど
口火を切ったり口吻を飛ばしたり
檄も飛ばすし非難はごうごう
まあとにかく踊り狂ってることは動かしがたい事実
遊びは一緒にやらなきゃ始まらないし終わらない
演舞のようだと言うわけ
ともあれ
ばらばらになった美しいものをかき集めたり
まとめたりまたばら蒔いたりするのには
それなりの訓練が必要とされる
なので大切なのは

思いやり、という話らしい







自由詩 思いやり Copyright ふるる 2021-03-17 11:15:12
notebook Home 戻る  過去 未来