啓蟄と芽ふき
道草次郎

じっと殻に背を丸め
春を待つさなぎのように森は
いまだ
あわい揺曳ようえいの入江

冬木立のはざま
小橋のそでに
ゆたかな寝がえりをうつ
にがいふきのとう

おもむろに
耳たぶのハンモックへ
春の符牒は
交わされてゆく

そこはかとない
愁いをしたがえた風は
もろみのように
まだ林で遊んでいる



自由詩 啓蟄と芽ふき Copyright 道草次郎 2021-03-08 18:50:36
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