三つの墓について
道草次郎

「象の墓場」

大地が肉あるものをふるいにかけてしまわないのは、それはやはり大地の優しさからではない。惑星の核部コアに必ず一個はある象の墓場のお蔭なのである。琥珀に浮かぶを殊更に拒むその牙が晒す、黒に描く円弧アークのお陰なのである。


「青の墓」

空と雲は青いところで遊んでいる。やわらかにそしてゆるやかに、みずからを癒している。いちめんエメラルドグリーンだった頃、空と雲はいくらか病んでしまった。クレセントムーン三日月は羊歯と飛龍のおもかげ。青さ、それはたぶん深すぎて思い出せぬ空の記憶なのだろう。または慰撫の色相に波打つ手の墓なのかも知れない。


「授乳とお墓」

君が笑わなくても君の存在は笑っていて、君が泣いていても君の存在は喜んでいて、君が怒っていても君の存在は育っていて、君が喋れなくても君の存在は諭していて、君が眠っていても君の存在は満ち足りていて、そして、君が天寿をまっとうしたとしても君のお墓は吸い続けることだろう。



自由詩 三つの墓について Copyright 道草次郎 2021-03-07 02:28:39
notebook Home 戻る