つぶやかない
たもつ


人が笑っている
人も笑っている
空は何もしない
近所の人が歩いている
犬を連れている
性別は男とオス
海は遠い
(午前6:53 · 2021年2月3日·)


椅子が眠っている
壊れたパンケーキのように
寝言を言わないのは
口がないことに気づいてしまうから
靴を並べてください
みんな帰ります
(午前7:09 · 2021年2月4日·)


町内に水族館ができた
綺麗な魚などが見たかったのに
地味な色の生き物ばかり集まってくる
家に帰ると
十数年ぶりに従姉から電話があった
明日は雨だと教えてくれた
(午後0:02 · 2021年2月6日·)


眠れない夜
眠ってばかりの夜
窓を開けて夜の黒をすくう
けれど掌にあるのは
無数の星屑ばかり
母は準備を怠らない人だった
準備をし続け一生を終えた
(午前9:14 · 2021年2月7日·)


自転車置き場で春を待ってる
何もない、が時々
風のように吹いて
いずれ何もなくなる
見えないはずの自分の後ろ姿が
父に似てきたと思う
(午前8:42 · 2021年2月11日·)


飛行場に触れるあなたの手が
昨日より少し柔らかい
優しい形の飛行場は雨に濡れて
いくら言葉を費やしても
飛べない空がある
誰かが窓を開ける
誰かが他の窓を閉める
(午後6:05 · 2021年2月13日·)


魔法使いになった
醤油ラーメンを味噌に変える
それが唯一使える魔法
役に立たなそうものが役に立つ
というのはよくある話で
これまでの功績が世界中で讃えられ
この度ノーベル平和賞をいただいた
春の砂浜で
本当は塩が好き、とつぶやいてみる
(午前9:08 · 2021年2月14日·)


葱畑の向こうに気球が落下する
作りかけのオランダスープは
すっかり蒸発してしまった
暖かいある日
君からの手紙が届いたと思ったけれど
それは見慣れた花びらだった
(午前6:54 · 2021年2月19日·)


陽射しが好きでした
人が思い思いの角度で傾くのもすべて
いたる所に象の巣がある街を
川は忘れて流れていく
本日は在席しています
昼間が終わる頃まで
季節の一番奥の方です
(午前7:05 · 2021年2月20日·)


ひとつ、またひとつ
命が往来する
つぶやきは羽音
雨水の匂いがする
自分の心は
自分の一番近くにあるはずのに
どうして仲良くなれないのだろう
ただなだらかに
坂道は続いている
(午後2:32 · 2021年2月21日·)



自由詩 つぶやかない Copyright たもつ 2021-02-21 19:52:01縦
notebook Home 戻る