彷徨短歌10首
道草次郎

打ち震え他山の石となりてあり銀漢ぎんかん闇に渦巻くさなかに

撃ち砕く蒼空そらの独房ふるさとの浅葱色あさぎいろなる苫屋とまやにありて

この詩をば貶むまいとアトラスの巨躯を跨ぎし我ぞ悲しき

真鍮の都のような心持ち背戸のなま風血潮めく春

彷徨える黒猫空に彫琢し静脈をゆくエディアカラ群

音のなき世界に慟哭ありてなお黒き小枝の宙を掴むる

辛辣のモカ珈琲遥かなり盧生ろせいの夢に垂らす生乳

死地を往く眼のなき魚にてつの脚白杖たよりにかかる浄土へ

燃あがる思念のくらき焔にて黒をくわえんユピテル赤斑

海底の異常な迄の扼腕やくわんいだかれ後世ごせ蝌蚪かととなりたし


短歌 彷徨短歌10首 Copyright 道草次郎 2021-01-29 09:20:14縦
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