サンバがキュ
紀ノ川つかさ

地震に火山に台風に飢饉
いつでもやられてばかりの我が国日本
そんな中のこんな小さな村じゃ
働けない子は育てられぬよ
みんな明日の食べ物を得るため
狩りをし漁をし田畑を耕す
誰もが働かなければならない
働けない子が食いつぶすのは
それはこの村が許しませぬぞ
それは何より重い罪ですぞ

サンバがキュ! サンバがキュ! サンバがキュ!
はいご愁傷様

分かってはいても親である限り
心を鬼にし殺めるなどできぬ
こっそりひっそり育ててみようか
そうはいっても行き着く先は
発覚のあげく村八分とか
監禁しておく座敷牢とか
いずれも人生と呼ぶにゃ辛くはないかい?
ともあれ私にまかせなさい
重い罪負うのも慣れてしまった
地獄巡りは私一人で十分

サンバがキュ! サンバがキュ! サンバがキュ!
お前の人生のために

時に美しい心を持った
都の若者が来て言うことにゃ
生まれた子には何の罪もない
どんな子でも命ある限り
人に愛される権利があるのだ
しかし若者よこの村にはな
山のようなお金もないし
有り余るほどの人手もないのだ
何もかも足りないお世話もできない
きれいごとを言うのもそこまでだ

サンバがキュ! サンバがキュ! サンバがキュ!
このええかっこしいが

時は現代 医療福祉も進み
今こそ理想を実践すべき時
いえいえそう簡単には行きませぬ
この国で生まれ育った限り
日本語を使って生きていくのです
敬語が作り上げる日本の心
人様にはひたすら頭を下げよ
人様に迷惑をかけるは罪だ
だから迷惑になりそうな命など
今でも排除するのに抵抗はないのです
 
サンバがキュ! サンバがキュ! サンバがキュ!
共に踊ろう共に歌おう

サンバがキュ! サンバがキュ! サンバがキュ!
はい、ご愁傷様


自由詩 サンバがキュ Copyright 紀ノ川つかさ 2021-01-28 21:24:24
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