掌波響震
木立 悟





小さく丸く遠い曇が
月よりも明るく輝いている
夜の陽の白
草はまわる


暗い工場
巨大な 機械の足
逃れようとするたびに
増えてゆく階層


ひとつは昇り
ひとつは嘆く
ひとひとひとひと
ひとつのしずく


万華鏡のなかの鳥
互いに互いを知らない鳥
重なる鳥 廻る鳥
無限の檻から出れない鳥


蜂と蜘蛛と花と窓
音に光にひるがえり
曇が曇に落とす蛇
無数の羽に溺れる蛇


雨の仮面の内から見ると
すべては見る方へとずれてゆく
空白が生まれ 埋まることなく
少しずつ重なり輪を描く


白い壁 陽の色の痛み
空を仰げば 葉のかたちの月
降り下りる風のなか
草はまわる


こぼれるのか ころがるのか
いずれにしても先は見えない
葉の裏の空は明るく
月以外のすべてを震わせてゆく



















自由詩 掌波響震 Copyright 木立 悟 2021-01-23 22:08:20縦
notebook Home 戻る  過去 未来