同一テーマにおける3つの変奏「てがみ」
すいせい



丘の上には公園があり
たくさんの日曜日が植わっている
真っ白な小さな手が花のように開き
その上に我が物顔で日曜日が
乗っている
自転車を押して登らなければいけない
花梨がまだ実を手放さないで
雪混じりの風に震えている
おなじ風景がまぼろしのように
ぶらさがって
太陽があがると溶け出し
黒い黒い土に吸われていく
ごとりと音がした
父と同じ顔をした
花梨がおちた
たくさんの日曜日が泣いている
丘から転がりおちた父はその
香りだけ残っているようで
むずかる
日曜日がゆっくりと握りつぶされていく
その先には水門があるのだ
そこにも小さな手が咲き
抱きとめてくれるだろう
知らない曜日
誰かが日曜日を盗んで
水門を流れる水は
きっといちだんと輝いた



---



ゆきまじりの風が
祈るように丘にふく
みじろいで咲く
小さなしろいろの手に結ばれた日曜日
ゆれる


背の軋む音を頼りに
ぬかるんだ道を静かにのぼる
似たような空鏡、みあげても
足をつけたつめたさにひるがえる
そうする他なかった
花梨の守り実が落ちた


たくさんの日曜日が泣いている
はたされなかった約束と
父に似た花梨
ころがり照る日のひかりに
どうか雪を溶かしておくれ
香り曳く
爪にこびりついた黒土に
水脈の絶えないように


ゆきまじりの風のふく丘で
小さなしろいろの手が繁茂する
誰も知らない曜日が
つぎつぎに割れていく
そして結ばれるあらたな祈り
心にもない水音が
ひときわ輝いて
開けなかった一葉のたよりを
握りつぶした



---



ことばでふれることなく
ひとつ落ちた果実
父に似た花梨の実が坂を転がり
水門につく
小さなやわらかい
しろいろの手がやさしくだきとめ
その願いを日曜日として囁いている


丘の上には古い公園があり
遠くには海が見えたはずだ
雪まじりの風が粉砂糖のように仕上げた
ゆびきりとため息の城
背を軋ませぬかるみに
あしをとられながら
それでもゆっくりとのぼる


春になったら
と破った日記のしたでほほえむ
きみの手もとてもしろくて小さくて
結ばれるなんの変哲もない日への
ゆびきり
水音のいっそうかがやく先へ
そっと吹き込んで
それでもたしかに刻まれてゆく





自由詩 同一テーマにおける3つの変奏「てがみ」 Copyright すいせい 2021-01-23 17:17:26
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