星を縫うひと
田中修子

きるからころから
 きるからころころ

キラキラした音が耳の夜に
温かい雨のように
降りしきってくるのを幾らでも 溢れるまで
宝石箱にしまおう

こぎん糸を 祖母とほどいて巻きなおした
幼いころを 結わえて
 
あなたと歩く薄青の夏の夜、風は秋を孕み
名を知らぬ明るい白色の星が
つくねんとして 浮かんでいる
あの星が今度 あの場所に煌めくのは
百年後なのだそうだ 彗星の旅路

こぎん糸の絡まったのをほぐし
あなたに端を渡す
くるくると巻いてもらったら拙く絡まり
ちょきん、と切る
そうしてまた 二かせ目をつくりだす

(おんなじことしたことある)
ふっと記憶が結ばれて運ばれる
幼い日の私と 祖母とが 白いこぎん糸を
手から手へ渡したことを

いま、あなたと私をつなぐ糸はさくら色と紫陽花色の柔らかな、階調

白い布にさくら色と紫陽花色の
あわいの足跡をのこしていく
百年後 或いは 五十億年後
すべて燃え尽きてからも途切れないのです

星を縫うひと


自由詩 星を縫うひと Copyright 田中修子 2021-01-22 03:08:54縦
notebook Home 戻る  過去 未来