散歩の途中で
空丸

空がある
雲はない
宇宙飛行士が今日の仕事をしている
独り今日に留まり呼吸に委ねる
凍りついた世界に小さな穴をあけ
釣り糸をゆっくり垂らす
僕が来た道に横断歩道はあっただろうか。
君はぼくをちゃんと渡れただろうか。
雨の日に投函した手紙は、晴れの日に届いただろうか。
石段を下りる                   ・・・下り続ける。
鏡に映った私ではなく鏡面そのものを見たいのだ。
少女が十字路で空を見上げている。上空の戦闘機はどこへ向かうのか。明日、君はどこを歩くのだろう。まだ資本主義を歩いているのだろうか。
排除するな
同化するな

一行あけて喫煙所に立ち寄る。
普段通りの朝に、「普段通りの朝」とタイトルを付け、線路脇の風車小屋で私は風景になる。雲の流れに音はなく、時刻表通り電車が走る。
何年生きたのだろう。川辺のベンチで、白髪の老婆が、風にあたっていた。何もなかったように。
ひざっこぞうを陽にかざし、飛行機雲を一本ひく。
西瓜の種をどこに飛ばそうが自由だった。
あの頃はどうでもよいことなど一つもなかった。
遊び疲れた子どもはくるくる回りながら子宮に帰る。
何人かの思い出の中にぼくがいて適当に処理されているのだろう。白黒の縁側で笑っていた。
後ろ姿は朝に向かっている。最終ページは書きかけのまま。
そうこうするうちに大通りに出た。


自由詩 散歩の途中で Copyright 空丸 2021-01-14 19:00:52
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