ふたごらいたー/即興ゴルコンダ(仮)遅刻
こうだたけみ

私の好きな人はピースを吸っていてライターはジッポー中身の入っていない大きなリュック背負って弾むように歩く。いつでもデニムのジャケットに細身のパンツで冬だけフェイクファー付きのコート。どれをとってもカッコつけてるのが見え見えなのに一個もカッコよくないのだったそしてやたらと泣くんだった長いまつ毛に雫が溜まる。ラクダのつくるオアシス。極小。砂漠の夜は寒いらしいよ。すぐにでも死んでしまうね。やっと付き合えた彼女にお揃いの革製ブレスレットを贈ったのになかなかつけてもらえなくて、文芸部の部長のくせに機関誌になんにも書かなくて、いつでも湿ってるから手を握るのが苦手。だけど、親身になって話を聞くから友達はたくさん。そういえば、私のことをかわいいって言ってくれてたっけ。眼鏡率は低いけど、あれ絶対ど近眼だろ。机に置きっぱなしのピースの箱を開けて一本抜き取って、おもむろに取り出した赤ペンで口紅の跡状に色を塗る。それを箱に戻してみんなでにやにやしながら彼が帰るのを待つ。私ね、泣くんじゃないかなって思ったよ。ネット記事を雀の涙の執筆料で引き受ける双子のライターが、使い捨てオイルライターを握ってカチカチしてる。利用されては捨てられて。フタコブラクダのこぶの中身は脂なんだって。縦列つなぎで月の砂漠へ。連なりたかったな、私も。


自由詩 ふたごらいたー/即興ゴルコンダ(仮)遅刻 Copyright こうだたけみ 2021-01-03 23:55:39
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