冬の散歩道
そらの珊瑚

おだやかすぎる静止画
雲さえ止まってる
コンビニまでならんで歩く
とうに背を越していった娘の中に
小さな娘が見え隠れする
つかまらない鬼ごっこ

今日の空から降ってくる光は
束になって
いっとき誰をも平等にあたためる
遠くて近い暖炉みたいに
生きている者にも
生きていた者にも
道端で枯れた猫じゃらしにも
葉脈だけになった落ち葉にも

ひかりまみれてここに在る

さかのぼった時間に
今も息づいているのは
なぜかやさしいあれこればかり
かなしいできごとでさえ
魔法をふりかけられて砂糖菓子になる

それはうそ
かなしいことはいまもかなしい
だけどゆるされている
そんなうそたちであたためあって

いしころばかり拾い集めて
すっかり重たくなったポケットを裏返してみる
ひとつ、ふたつくらいは
きせきのような虹砂になっていやしないかと
それは
とてもささやかで小さくて
あっけなく風に吹き飛ばされてしまうから

風のない
冬の散歩道で
探してみるのがいい
探してみなくたっていい


自由詩 冬の散歩道 Copyright そらの珊瑚 2020-12-29 11:58:30
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