悠久錦
鵜飼千代子
繭を羊毛を麻を綿花を紡ぐよに
するすると解けてきたのならいいのにね
糸巻き巻きを歌いながら
とんとん しゃー
とんとん しゃー
ひと目ひと目
一段一段
頭に図柄を描き
まだ手応えのない作業に精を出す
草やゴミだらけのこの糸くずが
いつか
一張羅の生地になる
花瓶敷に
タペストリーに
そして 足元に
時間を味方にした
果てしない手仕事は誰の為
うさぎ跳びでもするように
とんとん しゃー
とんとん しゃー
とんとん
希求を金糸と織り込んで
悠久錦
(
ゆうきゅうにしき
)
は天翔る
2020.12.13
初出
「うろこアンソロジー 2020年版」所収
自由詩
悠久錦
Copyright
鵜飼千代子
2020-12-14 21:35:04