きみの詩がわたしの中で温かくひかったように
水宮うみ

目覚めたことを自覚してないときの目を不覚にも見られてしまった



生まれてから言葉を話すまでのあいだ、ぼくが見ていた知らない景色



ありさんが糖を運ぶの眺めてたから夕焼けは今でも甘い



きみと出会えたそれだけで幸せと思えたことを わすれないように



言葉から言葉が生まれて楽しくてことばのことばかり考えた



私の心のなかでドラムを叩いているあの人へ贈る歌



ひとりきり生きていくことの寂しさは きみとの出会いで忘れてしまった



ひびひかる ひとに聴こえない音域できみの揺らした鈴が鳴ってる



二十一世紀初頭にセミ捕りをしていた人と待ち合わせする



走り回りいつでもわいわい喧しいあいつの季節はいつだって夏



こどもの頃 絵本は詩的な文章がたくさんあって わからなかった



ケースの中 ねむる眼鏡の見る夢は私の夢と似てるだろうか



生後3ヶ月の猫がいるゲージを笑って見てる みんな見られてる



黄昏時は表情が見えなくて、登場人物みたいに想う



日差しに照らされるような眼差しを向けられ照れて日かげへ向かった



飼い猫に手を噛まれたら無言で手を引きじっとして追撃を避ける



詩のように深々と降る冬の中 ポエムを書いてポカポカになる



僕の逃避場所になってくれていたあの本屋さんにちょっと帰りたい



あのひとがきみの笑顔の背景にいるから なにも 言えないまま



記念日は偽物みたいにきらめいて綺麗な文字で星を飾った



存在しない詩ときみがつけた傷口だけが残っている心



深淵に覗かれるように、キャラクターたちも僕らを見守っている



割ったときあまりが出るのがあまり好きじゃなくて割りきれない顔をする



あのひとの優しさの欠片を握りしめるとすこし早く眠れる



あなたへの気持ちに詩が宿っていて、それを忘れずに持っていきたい



春の日の芽が優しい目で笑っていて記憶のなかの桜が消えない



コンクリート 知らない誰かの音楽がつめたい夜に反射していた



きみの詩がわたしの中で温かくひかったように、わたしの詩も、



誰かの言葉に当てはめちゃう前に わたしの声できみに伝えたい



短歌 きみの詩がわたしの中で温かくひかったように Copyright 水宮うみ 2020-12-04 17:58:30
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